March 15, 2016 | Design, Art, Culture, Fashion | a wall newspaper | text_Chiharu Watabe
デザイン集団Tomatoが現れて早25年。彼らを改めて知る絶好の機会が到来です。
「Tomatoの方針は常に“研究と学び”に尽きる」と、メンバーは言う。
突然そう言われても、30代より下の世代にはピンと来ないかもしれない。Tomatoとは1991年にロンドンで発足し、世界を股に掛けて活躍するデザイン集団だ。
テレビ朝日のロゴデザイン(2003年)。音に反応するムービングイメージは話題に。 ©tv asahi Creative Direction : tomato + tv asahi
彼らが登場した90年代初頭は、グラフィックの世界にコンピューターが導入され始めたころと重なる。この新しいツールで何ができるのか、まだ手探りな状況だった。
そんな折に現れたTomatoは、これまでのアナログなツールと新しいコンピューターテクノロジーをミックスさせ、自由な遊びを見せてくれた。彼らの姿は、当時デザインの世界で路頭に迷っていたデザイナーたちの目には、革新的に映ったに違いない。
Underworldの楽曲も印象的な映画『トレインスポッティング』(1996年)のタイトルシークエンス。 ©tomato
書籍『mmm… Skyscraper, I Love You』(1993年)の中ページ。混沌とした都市の様子を表現。 ©tomato/underworld
例えば、初期の代表的な作品の1つ『mmm… Skyscraper, I Love You』。書籍でもあり、またメンバーのカール・ハイドとリック・スミスが中心となった音楽ユニットUnderworldがリリースしたシングルでもある。音楽とグラフィックの融合という、今日では当たり前となった発想のハシりだ。
「コンピューターのモニター上では、グラフィック作品に完成というものがない。後でいくらでも変えられる。僕らの作品は世に出た段階で完成しているわけではなく、そこからまた変容していく」。そんな言葉を彼らは90年代に残している。サンプリングとミックスが新しい音楽を作っていた時代に、カット&ペーストを繰り返してレイヤーを重ねた、全く読めないと言っていいビジュアルのワイルドさは目に心地よく、グラフィックもこれでいいのだと感じさせた。
グラフィックや映像から音楽、そしてファッションまで、メンバーそれぞれの個性が生きる分野で異なるテイストを発表し続けるTomatoは、まさに「研究と学び」を続け、変容するデザイン(に限らない)集団なのである。
Underworld、ロンドンAstoria Theatreでのライブ風景(1993年)。今日におけるVJの先駆けだった。 ©tomato/underworld
Underworldの最新作『Barbara Barbara, we face a shining future』のジャケットデザイン(2016年)。 ©tomato/underworld
そんなTomatoが、結成25周年を記念して渋谷パルコで展覧会を開催中だ。同館のパルコミュージアム、ギャラリーXを中心に、期間限定ショップでのグッズ販売、来日メンバーによるギャラリーツアーなどが開催される。全館+館外を使っての盛りだくさんプロジェクト。「予定」自体ここでは書き切れないのだが、「こんなのあったらどう?」と、思いついたら実行に移してしまう彼らのことなので、当日になるまで一体何が起こるかわからない。書き切れないというよりは、予測がつかないのだ。
「終わりなき探究心と、常に念頭にある“What if?(もしも)”の疑問を感じてほしい」というTomato。動き続ける彼らの今を見る最高の機会が、メンバーも大好きな渋谷の街にやってくる。
メンバーも来日します!!
(左)Simon Taylor (右)John Warwicker
Tomato 1991年、ロンドンで発足。デジタル世紀の先導者としてグラフィック、バーチャルメディア/デザインの最先端を常に走り続ける。メンバーは現在、ロンドン、メルボルン、東京、カッセル(ドイツ)と、さまざまな都市に分散し、世界中から新たな表現作品を発表している。80年代からの「渋谷好き」でもある。
『THE TOMATO PROJECT 25TH ANNIVERSARY EXHIBITION “O”』
〈パルコミュージアム(渋谷パルコPART1 3F)〉〈ギャラリーX(渋谷パルコPART1 B1)〉
東京都渋谷区宇田川町15-1 TEL 03 3477 5873。〜4月3日。10時〜21時(最終日18時閉場)。入場料500円。公式サイト