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隈研吾設計の最新ミュージアムがオープン!

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November 2, 2019 | Architecture, Design | casabrutus.com

10月26日、東京・原宿駅にほど近い明治神宮内苑に〈明治神宮ミュージアム〉が開館。100年の杜に溶け込むような建築が誕生しました。

南参道からミュージアムを見る。抑えたダークグレーの外装が周囲の緑に同化し、先端2cmの薄い軒が木の葉のように漂う。

明治神宮の南参道に位置する神橋。10月26日、そのたもとに同宮のご祭神である明治天皇と昭憲皇太后にゆかりの品々を展示する〈明治神宮ミュージアム〉が開館した。設計を手がけたのは、隈研吾。コンテンポラリーでありながらも和の意匠を呈する鉄筋コンクリート造・鉄骨造の2階建てで、3つの展示室と伸びやかなロビーを内包する。

設計にあたり、隈が重視したのは杜との関係性。100年以上の歳月をかけ整備してきた緑の景観を損ねることなく、そこに溶け込むような建築を模索したという。結果、導き出されたのが日本伝統の入母屋造。建物全体の高さを抑えるのはもちろん、杜に向かって伸びる四方の軒を低く収められ、同時に内部空間を大きくとれることが決め手となった。

架構が現しになったメインロビー。リズミカルに並ぶ柱が杜の木立を、床に敷かれた薄灰色の御影石が境内の玉砂利を思わせる。神社でよく見られる、垂木の木口を白く塗る手法を踏襲し、構造体である鉄骨梁の下面を白く塗っているのが印象的だ。

薄く軽やかな軒をくぐり、館内に一歩足を踏み入れると、まず驚くのはその開放感。最高高さ約7mのメインロビーでは、大きくとられた開口が杜の緑を大胆に切り取り、現しの梁を支える柱がリズミカルに並ぶ。その連なりは、外壁を構成するルーバー、さらには周囲の木立と呼応し、内と外がゆるやかにつながっていく。

一方、展示の中心は、2階に設けられた常設の宝物展示室だ。東日本大震災で被害を受けた屋根の修復と耐震工事のため、現在閉館中の〈宝物殿〉から移してきた宝物類の中でも、必見は大日本帝国憲法が発布された日に明治天皇が乗ったとされる六頭曳儀装車(ろくとうびきぎそうしゃ)。隈は、かつてこの馬車が置かれていた展示室を模して、ヴォールトの格天井を新たな解釈の下、再現している。

大和張りの壁からルーバー、そしてガラスへと変化するグラデーションが美しい2階ロビー。左奥のベンチは、明治神宮境内で役割を終えた木を使用しているという。

100年以上前、明治神宮の創建に際して人の手で作り出され、今では自然林と見紛う豊かな杜。その懐に抱かれるようにして佇む建築も、また長い歳月をかけてこの地に根付いていくに違いない。

〈明治神宮ミュージアム〉

東京都渋谷区代々木神園町1-1。10時〜16時30分(最終入館16時)。木曜休・展示替期間休。入館料1,000円。TEL 03 3379 5875。

須田二郎「木の器」展@OUTBOUND|輪湖雅江の器とごはん

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November 3, 2019 | Design, Food | casabrutus.com

器は料理を盛ってこそ!ということで、人気作家の最新作を発表する個展に合わせて、作家本人にも料理を作ってもらっちゃおう…という無茶ぶり企画5回目。ダイナミックで使いやすいウッドボウルで大人気の木工家、須田二郎の工房を訪ねました。普段の料理が映えるボウルから木のカトラリーや調理ツールまで、350点の作品が並ぶ個展は、東京・吉祥寺の〈OUTBOUND〉で11月13日から開催!

東京・八王子に住居兼工房を構える木工家、須田二郎が作った「ごはんと器」。本日のごはんは3種類のメニューを右下のウッドボウルに盛り合わせていただくランチプレート。左下/〈ウッドボウル・サクラ材〉×緑の野菜と柿のサラダ。左上/卵とトマトのウエボスフラメンカ。右上/〈漆ボウル・ナラ材〉×定番炒飯。レシピは後半でご紹介。

数年前から注目されはじめた器のひとつに「ウッドボウル」がある。「サラダや果物をざっくり盛るだけでカッコいい!」「ひとつあると食卓の雰囲気が変わる」「軽くて丈夫で扱いやすい」……などなど日常の器として魅力があるのはもちろんだが、実はその力強い佇まいにひと目惚れして思わず購入という人も多い。器好き、クラフト好きとは別の方面でもファンが増えている。

木のボウルの中でも断然人気があるのは「ウッドターニング」によるもの。木工旋盤(木を削るロクロ)という機械で木の塊を回転させながら形を削り出す技法だ。今回訪ねたのは、このウッドターニングの器で知られる須田二郎。もともと木こりだった須田は、森や林から切り出された生木を使ってボウルや皿を作る。乾燥する前の、まだたっぷり水分を含んだ状態の木を削るため、それが乾く過程でゆがんだりたわんだり、時にはちょっと割れたりする、その自然な姿がすこぶる魅力なのだ。

木の自然なゆがみを生かした須田二郎のウッドボウル各種。ただ重ねただけでもカッコいい。皿は4,000円前後、ボウルは10,000円~。

須田の工房兼住居は八王子の住宅街にある。中にはいると木工旋盤やら電動研ぎ石やら、見たことのない機械がたくさん並び、壁を埋め尽くすように工具が掛かっている。天井から壁まで、至るところにクラッカーの紙テープみたいな木の削り屑が絡みついているのが、なんだかすごい。

「ウッドターニングが海外で注目され出したのは1970~80年代かな。アメリカのリチャード・ラファンという木工家が有名になって、1984年に生木を使ったゆがみのあるウッドボウルを作ったんです」

アメリカではその後、趣味としての木工旋盤を広めようとするムーブメントも巻き起こるAAW(アソシェイション オブ アメリカン ウッドターニング)という団体のもとで旋盤や道具の改良が飛躍的に進み、安全かつ簡単に作業できるようになったのだ。

「日本にも昔から轆轤師と呼ばれる職人がいましたが、機械の進化に関しては世界の蚊帳の外。そんな中、1998年になって海外の優れた旋盤が入ってきたんですね。僕もすぐ購入して、1999年には木工旋盤で器を作り始めました。教えてくれる人も器の見本もないから、ビデオや教材を見ながらの“解体新書”状態でしたけど。自分がやりたいと思った時期と旋盤の進歩が重なったのはとても幸運なことでした」

八王子の住宅街に建つ工房兼住居。1階が工房。看板はアーティストでもある妻の牧子さんが制作した。

朝10時。ウッドボウルを作るため、工房の中に置いてあったソメイヨシノの丸太をチェーンソーで切り始める。断面の真ん中あたりの赤い部分は「赤身」、周囲の白い部分は「シロタ」という。ふたつに割ったところへ木工旋盤の丸いパーツをあてて大きさを決め、チェーンソーで粗くカット。旋盤にのせやすい形にする。

「雑木林で切られた木や、宅地造成で切らざるを得なかった木材を使うので、その時々で材料は変わります」と須田。今日使っているのは町田市の園芸屋から引き取ってきたもの。伐採された木はパルプや燃料チップになることが多いが、「2トントラックいっぱいでも3000円で売り買いされてしまうほど。まったくお金にならないんです。で、調べたら、アメリカ人は生木で器やボウルを作っているという。なるほど、この木を器にすればお金になって、森や雑木林の保全を進める資金ができるのかもしれない。そう思ったのが器作りのきっかけです」

日本の森と雑木林を甦らせたい。今もその一心で木の器を作っている。「最初のころは “伐採した木で器をつくって売る” なんて言っても、“何バカなこと考えてんだ” って笑われてました。でも、20年続けてきて最近やっと、後継というか同じような作り手が出てきたような気がします」

工房の中にあるソメイヨシノの丸太をチェーンソーで切り始める。丸太は植木屋が廃棄するものをもらってきた。

「じゃあ、旋盤にかけて削りますね」と木屑除けのメガネをかけ、ジャンパーのジッパーを首元までシャッと上げて完全防備した須田。旋盤の上で高速回転する木の塊に刃を当て、ぐいぐい削りながら外側を成形する。ガリガリ、ゴッゴッと爆音が響く。クラッカーの紙吹雪みたいに吹き出す木屑が、須田の腕に肩に積もっていく。水しぶきがバシャバシャ大量に飛び散る。「生の木だから樹液がすごいんです」。ハッ、そうか。これ機械の水じゃなくて、木そのものの水分なんですね。

丸いボウル型に成形できたところで、表面の仕上げに入る。刃を細いものに持ち替えて回転する木にあてると、今度は火花が飛び散って煙があがった。丸いボウル型になった表面を触ってみると、しっとり湿っている。というか、“しっとり” どころじゃないほどみずみずしく濡れている。

次は内側の成形。回転するボウルの縁にぐいっと刃を差し込んで、大きなボウルからひとまわり小さいボウルを取り出すように刳り抜くのだ。刃はニュージーランド製の先が曲がったもの。取り出した小さなボウルの塊も、さらに成形して製品にする(このあと、マトリョーシカ式に大・中・小3つのボウルができあがった)。

木の塊を旋盤にのせて高速回転させ、棹状のバーの先に刃がついた「バイト」を当ててボウルの外側を削っていく。絶え間なく吹き出す木屑が、須田の腕に肩に積もっていく。

旋盤から外したボウルを手に取ると、重い! ずっしり重い! 見た目はきれいなボウルだけれど、木の塊が手にのっかってるみたいに重い。まだ水分が含まれている本来の木は、こんなにも重いのか。最初に工房に入った時、空気がひんやりして気持ちよかったのは、水分を含んだ木がたくさんあるせいなのかも。

仕上げは丸く刳ったボウルの内側と外側を磨く作業。3段階にわけてサンドペーパーをかけ、滑らかにしながら形を整え、最後は細かい部分を手で磨く。時計を見るとまだ11時。ウッドボウル3つ分の成形を、わずか1時間足らずで仕上げたことになる。

「技術の高さはスピードの早さに現れます。職人仕事だから一定のスピードが求められるんです。だって、小田原の轆轤師のおじいちゃんなんかは1日に100個くらい平気で挽いちゃうからね。和菓子屋でも蕎麦屋でも “一人前” の職人には、あるレベル以上のものを1日にどれだけできるかみたいな、こなすべき仕事量とクオリティが求められる。それ以下だと職人の資格はないんです」

旋盤で成形し、3種類の電動サンダーをかけ、細部を手でも磨いたウッドボウル。まだ水分をたっぷり含んでいるのでずっしり重い。このあと2週間ほど乾燥させる。

削りあがったウッドボウルがあまりに力強くカッコよくて、「やっぱり林業に携わっていたからこそ生み出せる形があるんですか?」と聞いてみたところ、「それは関係ないなあ」と即答された。

「ウッドターニングにはウッドターニングの歴史と伝統があって、優れた形やデザインはすでに作り尽くされている。伝統工芸のようには知られていないから新鮮に見えるけれど、世界規模で見れば今つくられてるものはすべて過去の真似なんです。僕はその伝統にのっとって作ってきただけ」

ウッドボウルのほかカトラリーや調理ツールも人気。こちらは生木ではなく「おとし」と呼ばれる家具の廃材などから作る。写真はスプーンを作るところ。サクラ材の塊を鉛筆で引いた下描きにあわせてカット。

「ウッドターニングの伝統に忠実だっただけ」と話す須田の木の器を、最初に見い出して「いい!」と言い始めたのは、高橋みどりや西村千寿といった人気スタイリストや料理研究家たちだった。

「カトラリーの形や種類は、スタイリストの西村千寿さんに教わったようなもの。僕はカトラリー作りに関しては駆け出しで、師匠もいないし手本もないから作り方はまったくの自己流。わからないなりにスプーンを作って千寿さんのところに持っていくと、全然ダメってがっかりされたり、海外のカトラリーを手本に “こういうのを作ってみたら?” ってアドバイスをもらったり。その繰り返しでした」

工房の上階にある居住空間へ。コの字型のキッチンスペースで野菜を切ったり炒めたり、その手付きの早いこと!

さて、ウッドボウル3つにカトラリーを3点仕上げたらちょうどお昼どき。工房の2階にある住居スペースでさっそくキッチンに立つ須田。大きめのトマトをざくざく切ってフライパンに並べていく。「スペインの伝統的な卵料理、ウエボスフラメンカを作ります。若いころにスペインを旅行した時、宿のおばちゃんに教わったレシピ。ウエボスは2という意味なので、一人あたり卵2個が決まりですね」

料理は昔からよく作る。だから、ヘラやサーバーなど調理ツールも本当に使いやすい。炒飯を炒める時に欠かせないのは「穴あきヘラ」。野菜などのゴロゴロした食材を混ぜる時に抵抗が少なくなるよう穴をあけたという。

あっという間に醤油味のシンプルな炒飯、卵&トマトのウエボスフランメンカ、そしてシャキッシャキに水切りした野菜とほんのり甘い柿のサラダが完成。えーと、どの器に何を盛り付けましょう? 「料理はそれぞれ大きなボウルで出して、銘々が20cmくらいの皿に盛り合わせればいいんじゃない? 深さもあるから結構たっぷり入りますよ」

直径21cmの浅めウッドボウルに、炒飯、半熟卵&トマト、サラダを好きなだけ盛りつける。木の器には包容力があるから、こういう盛り合わせスタイルにはぴったり。この大きさでも軽いから、ボウルごと片手で持って食べてもいい。
ウエボスフランメンカ。①トマトを1cmの輪切りにし、さらに半分に切って半月形に。②フライパンにオリーブオイルをひいてトマトを重ならないよう平たく並べ、その上にハムエッグの要領で卵を落として焼く。③蓋をして、卵が固くならない程度で火を止める。④フライパンのままテーブルに出し、好みで塩・こしょう。
須田家の定番炒飯。①玉ねぎ、人参、ベーコンを小さく切って中華鍋で炒める。②溶き卵を加えてさらに木ベラで炒める。③ごはんを入れてさらによく炒め、最後に醤油とコショウで味付けて出来あがり。超シンプルだけれど、これがおいしい。
緑の野菜と柿のサラダ。レタス、生のホウレンソウ、塩もみして薄く切ったキュウリ、そして柿の薄切りを加えてドレッシングで和える。パリパリ、シャクシャク、ほんのり甘い柿がアクセントになって、いくらでも食べられる。

サラダや炒飯は大きなボウルに盛り付け、ウエボスフラメンカはフライパンのまま食卓へ。深さも包容力もあるウッドボウルは、無造作に盛るだけでもカッコよく決まるのがうれしい。浅めの皿には炒飯、サラダ、卵料理をいっしょに盛り付けてランチプレートにする。たっぷり盛っても十分余白あり……な大きさで、とても食べやすい。

「どんな色の料理も映える」といえば白い器が思い浮かぶけれど、木の器は「どんな料理もおおらかに受けとめる」感じ。たとえば、熱々チャーハンと半熟卵とトマトをぐちゃぐちゃっと混ぜちゃうような食べ方が、木の器だととてもおいしそうに見える。木の器や木のカトラリーは、金属のカチャカチャいう音がしないし “あたり” もやわらかい。思いっきり混ぜてひと口ほおばれば、こんがり炒飯とじっくり焼いたトマトの甘みにとろんと卵が絡まって、あぁたまらない!

手入れも簡単だ。仕上げに塗ったサラダオイルがコーティングの役割を担うので、料理を直接盛り付けても問題ない「ぬるま湯で洗って、よく乾かすこと。洗剤は使わないほうがいいかな。表面が白っぽくなってきたらサラダオイルを摺り込めば元通りになるし、ケバが立ったらサンドペーパーをかければいい」と須田。

キッチンとダイニングの境にあるカウンターには普段使いのカトラリーや、サーバーとしても使えるスプーン型のヘラなど。

「世の中のデザインには黄金律というものが存在するでしょう? 木のボウルにも黄金律はあるんです。リチャード・ラファンが書いた入門書『Turned-Bowl Design』には、答えがもう出ている。この大きさならばこの角度で立ち上がるのが美しいというような正解が、ね。これを読んで守れば、いい形はできるんです。それを凌駕するには芸術的なセンスと修練が必要なんだけど、僕はボウルを作るボウルメイカーであって、アーティストではないから」

とはいえ、ウッドターニングは生木が乾く時に「ゆがむ」のが特徴だから、黄金律にのっとって成形しても後で変化するのでは? 「いや、最初の形がよければゆがんでもいい形になるし、最初の形が悪ければ変化しても良くはならないです。それは確か。人がいいと思うものには、時代にも国にもよらない必然的な美しさがあるんですよ」

ウッドボウルは1点ずつ素材も木目も形も異なる。実際に見て触って「コレ!」と思うものを選んで。写真は大きくゆがんだフォルムがカッコいい。ウッドボウル・ナラ材 W30×D23×H13cm  12,000~13,000円

「ウッドボウルを作るようになって初めて、木って美しいんだなと気づいた」と話す須田は、今回の個展で350点ほどを出品する。カトラリーは1,000円台、小さめの皿は2,000円前後、ウッドボウルは12,000~13,000円…と手ごろな価格もあって、どんどん売れていく予感。特にウッドボウルはひとつひとつの形や歪みに個性があり、同じモノはふたつとない。どうぞお早めに!

すだじろう 1957年新潟県生まれ。各地を放浪後、1992年に神奈川県藤野町で百姓と山仕事を始める。1998年、ウッドターニングの存在を知り、木工旋盤を買って独学を始める。その後、AAW(アメリカウッドターニング協会)の会員として伝統的なウッドターニングを習得。現在は東京・八王子に工房を構えて製作。
須田がウッドターニングを学んだのは、アメリカの木工家リチャード・ラファンが書いた入門書『Turned-Bowl Design』。「はじめからすべてが整っていた訳ではなくて、海外の天才たちが優れた道具や教材を次々に開発したからこそ今がある。日本の作家も、ただ完成されたシステムを享受するだけでなく、発展の歴史を知るべきだと思います」

『須田二郎「木の器」展@OUTBOUND』

〈OUTBOUND アウトバウンド〉 東京都武蔵野市吉祥寺本町2-7-4-101 TEL 0422 27 7720。11時~19時。火曜定休。11月13日~22日。ボウル、皿、カトラリーを中心に350点ほど並ぶ予定。今回はじめて出す新作は木のマグカップなど。

デンマークから〈FRAMA〉のアイテムが新登場。

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November 4, 2019 | Design | casabrutus.com

ヨーロッパのアイテムを中心に、生産者の精神や作られた背景を感じられる雑貨やワイン、グロッサリーなどを扱う〈ドワネル〉。現在、デンマークのデザインスタジオ〈FRAMA〉によるポップアップストアを開催中だ。

〈FRAMA〉の《Triangolo Chair》。円と三角を組み合わせた、研ぎ澄まされたフォルムが印象的だ。

〈FRAMA〉は、クリエイティブディレクター・Niels Strøyer Christophersen を中心に、2011年に設立されたデンマークのデザインスタジオだ。ホテルや商業施設などのインテリア、家具・照明器具・テーブルウエア、そしてアポセカリーまで、ライフスタイルにまつわるデザインやプロデュースを行っている。

〈FRAMA〉のスタジオと店舗は、コペンハーゲンの中心部にある歴史的保護地区・ニューボーダーに隣接した建物で、1878年創業の薬局〈St. Pauls Apotek〉跡地だ。この古い薬局の佇まいにインスパイアされて2016年に誕生したのが、〈FRAMA〉のアポセカリーコレクション《St. Pauls Apothecary Collection》。ハンドケア・ボディケア・ヘアケア・フレグランスを網羅したコレクションは、自然の素材を用い、天然由来のエッセンシャルオイルを使った香りで、すべての製品開発をコペンハーゲンのスタジオで行っている。

コペンハーゲンの〈FRAMA〉スタジオストア。現在、コペンハーゲンのほか、 パリ、ハンブルグ、ストックホルム、オスロ、メキシコシティでもショールームを兼ねたスタジオストアを展開中だ。

暮らしを彩るスタイリッシュな家具と、身体をケアするナチュラルなアイテムの数々で、デンマークの息吹を感じてみてはいかが? 11月12日まで。

FRAMA POP UP STORE @doinel

〈doinel〉 東京都港区北青山3-2-9。〜11月12日。 TEL 03 3470 5007。12時〜20時。水曜休。

造本作家、デザイナー・駒形克己の世界に迫る。

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November 5, 2019 | Design, Art | casabrutus.com

『Little Eyes』『Little Tree』など自由な発想に満ちた絵本で知られる造本作家/デザイナーの駒形克己を紹介する展覧会が、11月23日より〈板橋区立美術館〉にて開催する。

『Little Tree』ワンストローク(2008年)

駒形克己は、国内外での長いキャリアを持つ造本作家/デザイナーだ。永井一正のもと日本デザインセンターでキャリアを積んだ後、アメリカへ渡りニューヨーク・CBS本社やシェクターグループでグラフィックデザイナーとして活躍。1983年に帰国してからはオフコース、安全地帯などのアルバムジャケット、コム デ ギャルソンなどのファッションブランドの招待状やタグなどのデザインを手がけてきた。

ズッカ ロゴ決定稿(1988年頃)
『Little Eyes1 はじめてのかたち』(偕成社)1990年

1989年、長女が誕生したことをきっかけに絵本づくりを開始。そのデザイン的視点に立った切り抜きや変形ページを活用した造本は、新しいタイプの絵本として注目を集めた。2010年ボローニャ国際児童図書展でラガッツィ賞に輝いた駒形の代表作である《Little Eyes》シリーズには、言葉が通じない幼児とコミュニケーションを取ろうとする父親の思いが反映されている。また、昨年上梓した絵本『ぎゅ ぎゅ ぎゅ―』(KADOKAWA)にはお孫さんの反応が反映されているという。

『Little Eyes3 いろ・いろ・いろ』偕成社(1990年)

本展では、アメリカ時代の実験的な試作から、音楽、ファッションでの仕事、絵本の制作のプロセスがわかるスケッチなどを展示。ユニークな絵本の魅力を立体的に見ることができるコーナーも設けられる。約300点の作品を通して駒形の初期から現在までの足跡をたどる、初の試みとなる。

「東京23区初の区立美術館」として1979年に開館した〈板橋区立美術館〉に、長く深く愛されるポップなデザインに会いに行こう。

『小さなデザイン 駒形克己展』

〈板橋区立美術館〉 東京都板橋区赤塚5-34-27。11月23日〜2020年1月13日。9時30分~17時(入館は~16時30分)。月曜休(1月13日は祝日のため開館)、12月29日~1月3日。一般650円。 TEL 03 3979 3251。

〈エルメス〉のスペシャルオーダーの魅力とは。会場構成を担当したガムフラテーシに直撃。

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November 6, 2019 | Design | casabrutus.com

六本木で始まった『夢のかたち Hermès Besopke Objects』は、〈エルメス〉がビスポークで製作したユニークな特注品を展示する催し。会場構成を担当したガムフラテーシのふたりに、今回の空間のデザインや〈エルメス〉への思いを尋ねた。

人力車はレザーの内装だけでなく、本体もエルメスが手がけた。
エンリコ・フラテージ(左)とスティーネ・ガムが2006年にスタートしたガムフラテーシは、デンマークのコペンハーゲンを拠点に、家具、照明器具、インテリアなどを主に手がける。近年、その活躍は目覚ましい。

数々の定番で知られる〈エルメス〉だが、スペシャルオーダーも同メゾンにとって、とても重要な存在だ。それは、名作《バーキン》が歌手ジェーン・バーキンのために最初に作られたというエピソードにも象徴されている。11月1日から一般公開が始まった『夢のかたち』展では、顧客やブティックスタッフの夢に耳を傾け、実現させたスペシャルオーダーのアイテムを、特別に設えた空間で堪能できる。この会場構成を、デンマークのコペンハーゲンを拠点として世界的に活躍する2人組、ガムフラテーシが手がけた。

エントランスの先に現れる最初の空間では、来場者が白い紙に自分の夢を描き、それが壁面に投影される。

「このエキシビションをデザインする上で特に意識したのは、夢の世界を具現化することでした。スペシャルオーダーとは、エルメスが顧客の夢を叶えるサービスでもあります。だから美術館の展覧会のように透明ケースの中に展示品を置くのではなく、ものがオープンに問いかけてくる空間を作りたかったのです。そんなインタラクションの中で、訪れた人が想像をふくらませ、新しい発見があるといいと思いました」

これまでも〈エルメス〉と何度もコラボレーションしてきたガムフラテーシのふたりは、今回の会場構成のコンセプトをそう語る。スペシャルオーダーを通して人々の夢を実現させ、完成された実用品として成立させること。そんなプロセスそのものが、彼らを触発したようだ。

ディテールにレザーを使用した特製のカヌー。壁面の湖の写真は、一部がムービーになっている。

「スペシャルオーダーのアイテムを完成させるためには、エルメスは顧客と無数の質問を交わすそうです。私たちもまた、このプロジェクトを進める過程で〈エルメス〉にたくさんの質問をすることになりました。それに対する答えよりも、答えを得るまでのプロセスこそが大切だったのです」

〈エルメス〉のスペシャルオーダー部門のチームは、デザイナー、技術者、職人などが在籍。顧客からのオーダーがあると、白紙の状態からチームみんなでその話を聞き、ディスカッションを重ねて形にしていくのだそうだ。

世界でも数台しか現存しない1920年代のフランス車〈ヴォワザン〉は、内装をすべて〈エルメス〉のレザーで仕上げた。

スペシャルオーダー部門には、自動車などの乗り物や、音楽関連の専門家もいる。また場合によっては、外部の職人と協業することもある。

「スペシャルオーダーと言っても、手に持てるバッグから、飛行機の内装や大型のボートまで、展示するものはバリエーションに富んでいます。この展覧会では、来場者の気持ちを考えながら、それらのアイテムをどんな流れでディスプレイするかをよく考えました」

扉を開けるとバッグが現れるスペース。アニメーションを使い、どの扉の向こうにも驚きが。

ガムフラテーシは、夢のスケールが大きくなっていくかのように、さまざまなアイテムを配置していった。前半で展示されるバッグは、いくつもの扉や引き出しのある空間で、扉を開けるとアニメーションとともにバッグが姿を現す。こうした見せ方のアイデアにより、ものの背景にあるストーリーを垣間見せていく。次のコーナーではスポーツに関するアイテム、後半は自動車や飛行機に関するアイテムというふうに、次々とプレイフルな演出が施された。

「バッグは開けたり閉じたりして使うもので、閉じると中は見えません。そこからシェルフの扉を開閉する見せ方を思いつきました。扉を開ける前にはドキドキするし、開けるとそこに驚きがあります。好奇心を刺激したいと考えました」

展示されるアイテムの色をふまえ、コーナーの色使いもデザインされている。

エルメスのスペシャルオーダーのアイテムは基本的に一点物なので、通常は所有者以外は目にするチャンスがない。この展覧会では、顧客の発注したアイテムを借り受けてきたものも多い。ガムフラテーシのふたりにとっても、一連のアイテムはとても興味深かったという。

「展覧会を準備する前に、パリのエルメスの第一号店でスペシャルオーダーアイテムを見る機会がありました。腕のいい職人が時間をかけて作る上質なものは、現代においてはとても貴重で、顧客とメゾンの信頼関係なしには決して生まれません。もの自体に、そんな関係性が宿っていると思います」」

リンゴを1つ入れるために作られた《アップルバッグ》。ストラップに折りたたみナイフがセットになっている。

それでは今回、展示されているアイテムの中で、彼らが最も気に入ったのはどれだろう?

「ひとつ選ぶなら《アップルバッグ》でしょうか。シンプルで、アメージングで、ポエティック。誰かの夢のバッグなので、自分で所有しようとは思いませんが、とても好きです」とスティーネ・ガムは話す。ちなみにエンリコ・フラテージは「1つ選ぶのは無理」だそう。

「私たちがデザイナーとして大事にしているのは好奇心。好奇心が人の心を動かし、楽しませてくれるから」と話すガムフラテーシのふたり。彼らにとって、自由でプレイフルな要素をそなえながら、普遍的な上質さをもつ〈エルメス〉のもの作りは、常にインスピレーションの源なのだそうだ。『夢のかたち Hermès Bespoke Objects』では、そんな〈エルメス〉とガムフラテーシのクリエイションの相性のよさにもぜひ注目したい。

『夢のかたち Hermès Bespoke Objects』

〈六本木ヒルズ ノースタワー〉1F & 2F 東京都港区六本木6丁目2番31号。11月1日~ 17日。10時~20時(最終入場19時半まで)。入場無料。会期中無休。

驚きに満ちた吉田ユニの大型個展がスタート。

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November 6, 2019 | Design | casabrutus.com

ポップでキャッチー、インパクトのあるビジュアルで魅了するアートディレクター、吉田ユニの個展が〈ラフォーレミュージアム原宿〉で5年ぶりに開催される。

全国に巡回し、話題を呼んだ「渡辺直美展」のビジュアルや、星野源、Charaなどの人気アーティストのCD・DVDジャケットを手がけることでも知られる吉田ユニ。2016年から続く『装苑』の連載「PLAY A SENSATION」では、気鋭の女優やタレントとコラボレーションし、彼女たちのキャラクターを生かしたユニークな作品世界で、読者を驚きの世界へと導いている。

『渡辺直美展 Naomi's Party』ビジュアル

吉田の作品が注目を集めるのは、単にビジュアルのおもしろさだけではなく、CGに頼らず、できるだけリアルにこだわって制作している点にあるだろう。一見デジタルで手がけたような作品も、よく見ると細部にまでこだわりぬいたアナログ表現の結晶であり、数ミリ単位まで計算された彼女の作品は、見れば見るほどおもしろさが深まっていく。今回は制作過程も披露するといい、見どころの多い展示となりそうだ。

『装苑』の連載「PLAY A SENSATION」ビジュアル

本展は2014年に開催した『IMAGINATOMY(イマジナトミー)』展に続き、〈ラフォーレミュージアム原宿〉で開催する5年ぶり、2度目となる個展。新作の発表と合わせて、これまで手がけてきたさまざまな作品も登場する。CDショップや本屋など、どこかで見かけた“あのアートワーク”とも再会できるかもしれない。

吉田ユニ展「Dialog」

〈ラフォーレミュージアム原宿〉 東京音渋谷区神宮前1-11-6 ラフォーレ原宿6F。TEL 03-3475-0411。11月15日〜12月1日。11時〜21時(入場は20時30分まで)。入場無料。

ポスターに見る、鮮烈なキューバのグラフィックパワー。

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November 8, 2019 | Design | casabrutus.com

キューバ革命から60周年の今年。1960年代~70年代に政治的、文化的に活用されたポスター文化の開花に始まるキューバのグラフィスム、その歴史を体験する展覧会が、〈パリ装飾芸術美術館〉にて開催中だ。

オリヴィオ・マルティネスによる「10月8日 ヒロイック ゲリラ ディ OSPAAL」のポスター、1973年。(c) MAD Paris Photo : Christophe Dellière

革命後の20世紀後半を通じ、封鎖や孤立を伴う国の状況により長らく国外に知られることがなかったキューバのポスター文化だが、近年ついにその閉ざされた扉が開かれた。これらの作品を通して見えてくるのは、島国キューバの特異な歴史背景だ。

フィデル・カストロによる1959年の革命まで、キューバのポスターは、アメリカの商品の消費を促すアメリカ式の広告に準じるだけのものだった。そこに終止符を打ったのが、チェ・ゲバラだ。1961年産業大臣に就任するや、商業広告を全面的に禁止した。こうしてキューバのポスターは政治・文化的な目的だけに制作されるようになる。

Dimas (Jorge Dimas Gonzales Linares, dit) — 1 Mayo ICAIC, 1973 (c) MAD Paris Photo : DR

キューバの政治ポスターの多くは革命史にインスピレーションを得、英雄をモチーフに国際的な孤立や革命への理解を国民に普及した。文化面では、全国各地で上映される映画がほぼ唯一のポスター制作の目的に。とはいえ、社会主義の美的レアリズムに準じた他の共産国との大きな違いは、ポップアート、サイケデリック、キネティクスといった世界のアートシーンを背景に自由闊達な表現に満ちていることだ。「美術館やギャラリーでアートに触れる機会のない人民の、大きな視覚ディスプレイなのだから」と、カストロはポスターというメディアにアーティスティックな表現の自由を与えたと言われる。

旧ソ連崩壊にともなうキューバの深刻な経済危機が、それまでのポスター制作の終焉を告げる。公の秩序が著しく低下する中、ISDI(高等デザイン学院)の若い卒業生たちは新たな表現の自由を掲げ、90年代以降は長い間のキューバポスター特有のグラフィズムを意図的に挑発するかのような作品を生み出して行く。革命の時代から新世代のアーティストまで、各時代を彩った名作キューバポスターが一堂に会す、またとない機会だ。

『キューバのポスター:革命と映画 1959年~2019年』

〈パリ装飾芸術美術館〉 107, rue de Rivoli 75011 Paris。10月31日~2020年2月2日。11時~18時(木曜~21時)。月曜休み。入館料:11ユーロ。

東京国立近代美術館で『窓展』が開催中!

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November 10, 2019 | Art, Design, Architecture | casabrutus.com

窓に焦点を当て、そこにかかわる多様な作品を一堂に集めた異例の展覧会『窓展:窓をめぐるアートと建築の旅』が、〈東京国立近代美術館〉で始まりました。

ピンホール・カメラの手法を用い、暗くした自宅の窓から映し出した外の光景を焼きつけた山中信夫の《ピンホール・ルーム 1─3》。

一般財団法人 窓研究所と東京国立近代美術館がタッグを組んで実現した、今回の『窓展:窓をめぐるアートと建築の旅』。窓研究所が主宰する「窓学」が続けてきた10年を超える研究の蓄積を基に、その総合監修を務める建築史・建築批評家の五十嵐太郎による学術協力と、東京国立近代美術館のキュレーションにより、ジャンルを横断した多様な視点で美術と建築の世界を広げている。

国内外の芸術・建築分野から収集され、厳選された窓にまつわる作品は、総勢58名による117点。14章にわたって、窓とアートを巡るテーマが展開される。

ゲルハルト・リヒター《8枚のガラス》。さまざまな角度に傾けられたガラスが、周囲のさまざまな像を映し出し、複雑に反射させる。 2012年 ガラス、スチール構造物 ワコウ・ワークス・オブ・アート

会場に入って最初にある「窓の世界」は、全体の内容を感じさせるイントロダクション。冒頭で繰り返される喜劇俳優バスター・キートンの映像は、私たちが普段窓に抱いているイメージを崩し、頭を柔らかくしてくれる。

窓の役割とは? 窓とアートの関係とは? ヨーロッパでは「絵画は窓と親戚関係にある」と約600年前から言われていたという。四角い枠に沿って身の回りを切り取り、新たな世界を見せるという点で共通し、それゆえに窓にインスピレーションを受けた作品が数多く誕生している。

学術協力として本展覧会に関わった、東北大学教授の五十嵐太郎。「窓学」の総合監修も長年にわたって務めている。本展のために用意された年表をバックに。

そんな建築とアートの関係を一気に把握できるのが、続くテーマの「窓からながめる建築とアート」だ。細長い空間の壁に沿って掲げられているのは、12mにわたる長い年表だ。古代から人類の歩みと共にする建築と窓に関連する技術の歴史、そしてアートとの関係が時間軸を通して詳細に示されている。

建築の欄では洋の東西を問わず革新的な特徴ある窓が写真とともに紹介され、縦に辿ると窓の技術と共に窓にまつわるアートを把握できる。フェルメールの《牛乳を注ぐ女》が、ガラス窓の普及とどのように関係があるのか? 第1回万国博覧会で建てられた〈クリスタル・パレス〉以降、アートはどのように変容したのか? 相互の関係性を見比べながら想像するだけで、時間はあっという間に過ぎてしまう。

ピーター・アイゼンマンやロバート・ヴェンチューリなど建築家のドローイングやスケッチが並ぶコーナー。窓の捉え方が各人で異なる様子が見て取れる。

反対側の壁に沿って展示されているのは、金沢工業大学のアーカイブから借りたという17〜18世紀の建築書5冊。ゴシックやルネッサンス、バロックなど、時代ごとの窓が精緻に描かれている様子を見ることができる。

その横では、ル・コルビュジエをはじめ、ルイス・カーン、ジェームズ・スターリング、ピーター・アイゼンマンなど近代以降の建築家のスケッチやドローイングを11点展示。直筆のタッチからは各人の性格とともに、窓に対する着眼点や意図をうかがい知ることができ、こちらも飽きないものだ。

なお、鑑賞の際にはお手元に、会場入口に置いてある小さな冊子を携帯していただきたい。この冊子は五十嵐が「文字による副音声のような解説」を意図して用意したもの。美術の文脈から解説されている今回のアート作品について、「窓学」の視点で見たときの解説が加えられている。建築的な見方がいっそう培われるに違いない。

アンリ・マティス《待つ》。開いたカーテン越しに遠くを見つめる左の女性と、閉まったカーテンを前に頭を垂れる右の女性の構図が意味深。 1921-22年 油彩・キャンバス 愛知県美術館

次のテーマからは、本格的にアートの展示が始まる。窓周辺の人物と景色の構図に着目できる、アンリ・マティスによる《窓辺の女》や《待つ》。窓のモチーフが潜んでいると言われる、マーク・ロスコやジョセフ・アルバースなどによる抽象絵画。

激動する時代にあって、窓に込められたメッセージを読み取ることのできる国内外のアーティストによる作品。写真や映像、インスタレーションなどに展開される、窓に関連する作品。

スクリーン化する窓に呼応した作品が増える一方で、ピンホール・カメラで光と景色に立ち戻る動きがあるのも興味深いところ。いずれも、窓特有の視点の切り替わりや、見る/見られるといった性格を引き出しながら、時代ごとの社会を鋭敏に切り取って表現している点に注目したい。

手前は、マルセル・デュシャン《フレッシュ・ウィドウ》、奥は左より、アド・ラインハート《抽象絵画》、ロイ・リキテンシュタイン《フレーム Ⅳ》、ベルトラン・ラヴィエ《ガラスの下の絵画》。抽象絵画やポップアートにも窓が影響している。

そして、美術館の前庭に設置された《窓に住む家/窓のない家》は、時間をかけて体感したい。藤本壮介が大分県に設計した〈House N〉の別バージョンともいえる作品では、窓ともいえる孔が開けられた2つの箱が、入れ子状に重なっている。

「内部に入ると、窓を通して刻々と移りゆく光や影とともに、周囲への広がりや距離感の微妙な変化を味わうことができる。所蔵品ギャラリーのある2階や4階から見るのもオススメ」と五十嵐は見どころを語る。

美術館の前庭に設置された藤本壮介によるインスタレーション《窓に住む家/窓のない家》。一般的な窓よりも大きな「窓」がいくつもあけられた箱が、二重の入れ子状になっている。

窓を通じて見えるものが広がり、窓について感じ、考えることがいっそう深まる本展。時代が揺れ動くなかで、窓もまた固定されているようで動く存在であることが示された。私たちも新たな「窓」を、自分の心につくって開くように促されるはずである。

『窓展:窓をめぐるアートと建築の旅』

〈東京国立近代美術館〉 〜2020年2月2日。10時〜17時(金・土〜20時。入館は閉館30分前まで)。月曜休(1月13日は開館)・年末年始・1月14日休。1,200円。11月30日には、藤本壮介のトークイベント、12月7日には、建築史家の中谷礼二らが参加する窓学の短編映画『柱間装置の文化誌』の上映会、12月14日にはホンマタカシトークイベントを開催予定。

台湾の〈誠品生活〉が、遂に日本上陸!

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November 10, 2019 | Design | window on the world

台湾が誇る〈誠品生活〉が、遂に日本での第1号店〈誠品生活日本橋〉をオープン。

選書専門チームによるセレクト本が並ぶ「誠品選書」。

〈誠品生活〉は書店を中心としたカルチャー体験型店舗で、日本橋店には書店の他に、文具ショップや台湾料理店、タピオカティー店など、多彩な台湾ブランドが揃う。

国内外を問わず、幅広いジャンルの書籍が並ぶ。

その一つ〈誠品生活市集〉では、台湾の食材や雑貨を購入できる。店舗のデザインを手がけたのは、台湾を代表する建築家の姚仁喜。

台湾のアーティストが昔の日本橋の街並みをイメージし作った暖簾。

〈誠品生活日本橋〉

東京都中央区日本橋室町3-2-1 TEL03 6225 2871。10時~21時。台湾料理店の〈富錦樹台菜香檳〉は11時~23時。

Kokontozai: KASHIYUKA’s Shop of Japanese Arts and Crafts / [URUSHI]

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November 10, 2019 | Design | KASHIYUKA’s Shop of Japanese Arts and Crafts

Searching all of Japan for handcrafted items that express its heart and soul, our proprietor, KASHIYUKA, presents things that bring a bit of luxury to everyday life. This time she visits a workshop for <strong>Tsugaru-nuri, </strong> the traditional craft representative of Aomori prefecture. She comes face to face with this beautiful handcrafting process that requires lacquering, rasping, polishing and repeating, layer upon layer.

Apple orchards abound in the suburbs of Hirosaki City, Aomori prefecture, including the one just next to the Matsuyama Urushi Workshop, which KASHIYUKA paid a visit this time.

I’d become preoccupied with lacquer, having had the opportunity to learn kintsugi technique, by which pottery is repaired with the application of urushi lacquer. I was intrigued by the depth and lustrous beauty of lacquer. At that time I saw a lacquered bowl with a refined dotted pattern such as one usually sees in delicate kimono fabric. “How did this pattern come to be?” It turned out to be Aomori’s Tsugaru-nuri, and so that’s where I wanted to head.

Purchase No. 20【 URUSHI】 Lacquer is ground to reveal a delicate pattern in this charming northern region handcraft. The featured bowl was made with the traditional nanako-nuri technique, using red urushi lacquer and a rare orange pigment to create a snowflake pattern.

“The traditional craft of Tsugaru-nuri was developed during the mid-Edo period under the auspices of the Hirosaki Domain. Originally made to adorn the scabbards of swords and knives, the practice eventually extended to serving trays and bowls. In essence, the urushi is applied in layers, then the surface is evenly ground in such a way as to expose the pattern,” Mr. Tsugumichi Matsuyama of Matsuyama Urushi Kobo explained. The labor-intensive process is said to require as many as 48 steps to make a single bowl, and hasn’t been altered in more than three centuries.

A small implement forms patterns in the lacquer.

Now, while there are a variety of traditional urushi techniques, the one I was shown was “nanako-nuri”, which produces a delightful dot pattern. I was told that nanako was a word for fish eggs. There’s something awfully sweet about the naming sense that people had in times past!

First off, the artisan brushes lacquer onto the bare wooden surface. While the lacquer remains tacky, rapeseeds are applied to it. A dry “shara-shara” sound caresses my ears while that’s taking place.

With Mr. Tsugumichi Matsuyama.

“When the urushi fully dries, I scrape away the seeds with a sort of spatula, which leaves craters. It is then I overlay the black or red lacquer coat, followed by rasping away the surface to leave the ring-shaped patterns.”

I get that this pattern could only emerge from the painstaking work of “grinding” away at it. Perhaps that is why Tsugaru-nuri first appeared to me as simply gorgeous, but looking deeper I perceived in it a profound beauty.

“For example, in the Wajima-nuri style, patterns are painted on to the urushi layer. But with Tsugaru-nuri the pattern lies beneath the lacquer cover. You’ve no idea what pattern might appear until you begin to rasp away the surface; and once you begin, you can’t turn back to fix anything, so you never feel quite at ease. Each time out is anxiety-inducing.”

KASHIYUKA observes that “both color and luster have a depth to them.”

Though time and again the same method is applied to painting on the lacquer and grinding it down, each and every one will appear different. That brings a satisfying value to the work for the maker, and the joy of choice for the purchaser. And so this time around I decided on a soup bowl in the nanako-nuri pattern. The cute dots and round shape bring to mind an apple. Also attractive was the fact, as I was told, that “due to the many layers of lacquer, it resists breakage.” With such a bowl I imagine the many ingredients of my miso soup will taste all the more delicious.

Soup Bowl of Nanako-nuri / Tsugumichi Matsuyama

Above / A nicely plump soup bowl. After the rapeseeds are scraped away, orange-pigmented lacquer is applied, and a snowflake pattern is inscribed by mixing lacquer with aluminum powder. ¥25,000. Below / Monsha-nuri lacquered ohashi. These delicate ohashi feature white urushi lacquer on the bamboo surface using an alternate method of application. ¥3,000. Matsuyama Urushi Kobo TEL 0172 87 7553

KASHIYUKA

Yuka Kashino, known as KASHIYUKA, is a member of the electro-pop group Perfume. Their first “best of” album — Perfume The Best “P Cubed” — featuring 52 songs, was released to popular and critical acclaim. Also their new song "Saisei" is confirmed for digital release on Nov. 29, 2019. They’ll set off on their〈Perfume 8th Tour 2020 “P Cubed” in Dome〉in February 2020. Kashiyuka loves matcha, and is lately taken with matcha bowls by contemporary ceramicists.www.perfume-web.jp

古今東西 かしゆか商店【津軽塗の椀】

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November 10, 2019 | Design, Travel | KASHIYUKA’s Shop of Japanese Arts and Crafts

日常を少し贅沢にするもの。日本の風土が感じられるもの。そんな手仕事を探して全国を巡り続ける、店主・かしゆか。今回訪ねたのは、青森を代表する伝統工芸「津軽塗」の工房。漆を塗る・研ぐ・磨く…を繰り返す美しい手仕事に出会った。

青森の弘前市郊外では、いたるところにリンゴ畑がある。今回訪ねた〈松山漆工房〉の隣にも。

最近、漆が気になっています。きっかけは漆で器を修繕する“金継ぎ”を習い始めたこと。漆の奥深さや艶やかな美しさに興味が湧いたんです。そんな時、着物の小紋柄のような細かいドット柄の漆椀を見て、「この模様はどうやって生まれたの?」とびっくり。それが青森の津軽塗だと聞いて、どうしても見てみたくなりました。

「津軽塗は江戸時代中期、弘前藩のもとで発達した伝統工芸。最初は刀剣の鞘を飾るために使われ、やがてお膳やお椀にも用いられるようになりました。漆を何層にも塗り重ねた表面を、平らに研ぎ出して模様を表すのが基本です」

と話すのは、〈松山漆工房〉の松山継道さん。お椀ひとつ完成させるために48の工程が必要と言われるほど手間のかかる工法は、300年以上変わっていないそうです。

Purchase No. 20【 津軽塗の椀 】漆を”研いで”模様を表す 北国の可憐な手仕事。津軽塗の代表的な技法「七々子塗」の椀。希少なオレンジ色の顔料を混ぜた朱漆を使い、雪輪の模様を重ねた。

さて、伝統的な塗り方にも種類がある中、工程を見せていただいたのは、ドット柄が可憐な「七々子塗」。ナナコは魚の卵のことなんですって。昔の人のネーミングセンスが、何だかかわいい。

漆をつけた仕掛けベラで模様を施す。

まずは挽き物職人がつくった木地に刷毛で漆を塗り、漆が濡れているうちに菜種を蒔きつけます。シャラシャラシャラ、乾いた音が耳に気持ちよく響いてくる。

松山継道さんと。

「漆を乾かした後で、ヘラを使って菜種を剥ぎ落とすと、クレーターが残るんです。ここに黒漆や朱漆を重ね塗りして研ぎ出すことで、輪っか状の模様が現れます」

なるほど、津軽塗の模様は、地道な“研ぎ”によって生まれるんですね。最初は華やかに思えましたが、よく見ると奥ゆかしいのはそのせいなのかもしれません。

「たとえば輪島塗では、漆の上に模様を描きます。でも津軽塗は、“漆の下”に模様をつける。この模様がうまく出てくるかどうかは、表面を研ぎ出して初めてわかるんです。いったん研ぎ始めたら一切修正ができないので、まったく気を抜けない。毎回ドキドキです」

「色にも艶にも奥行きがありますね」とかしゆか店主。

同じように塗って研ぎ出しても、ひとつひとつ見ると全部違う。だからつくりがいがあるし、買う側にとっても選びがいがあるのでしょう。そんなわけで、今回の買い付けは、七々子塗の汁椀に決定。リンゴを思わせる丸い形にかわいいドット。「何度も塗り重ねてあるから丈夫で壊れにくい」という点にも惹かれました。こんなお椀があったら、具だくさんのお味噌汁が一層おいしく味わえるだろうな、と想像が膨らみます。

七々子塗の椀 作/松山継道

上/ふくよかな形の七々子塗汁椀。菜種を剥がしてオレンジがかった朱漆を塗った上に、錫粉をまぜた漆で、ふわっとしたぼた雪の模様をつけた。25,000円。下/紋紗塗の縁起箸。竹に白漆で紋紗塗を施した繊細な箸。3,000円。松山漆工房 TEL 0172 87 7553。

かしゆか

テクノポップユニットPerfumeのメンバー。全52曲を収録した初のベストアルバム『Perfume The Best “P Cubed”』が好評発売中。新曲「再生」は2019年11月29日よりデジタル配信がスタートする。抹茶好き。現代作家の抹茶碗にも興味あり。www.perfume-web.jp

トム・ディクソンがデザイン!〈渋谷スクランブルスクエア〉46階のミュージックバー。

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November 12, 2019 | Design, Food, Culture | casabrutus.com

話題沸騰中の複合施設〈渋谷スクランブルスクエア〉。46階に誕生した〈パラダイス ラウンジ〉を手がけたのは、あの人気クリエイターたちです。

渋谷上空からの景色が朝から夜まで楽しめる〈パラダイス ラウンジ〉。

再開発が進む渋谷エリアの新しいランドマークとして11月1日に開業した〈渋谷スクランブルスクエア〉。渋谷エリアでは最も高い建造物となり、その中でも最高層に位置するのが46階の展望施設「SKY GALLERY」だ。渋谷上空229mから広がる360度の景色を堪能できるこの施設内に、ミュージックバー〈パラダイス ラウンジ〉がオープンした。

照明をはじめとするインテリアデザインはトム・ディクソンが手がけた。

インテリアデザインは、イギリスのデザイナー、トム・ディクソンと彼のデザインイノベーションチーム、デザインリサーチが担当。渋谷の街やスクランブル交差点をモチーフとし、赤・白を基調にしたレトロポップな空間になった。彼の十八番ともいえる印象的な照明づかいが見どころだ。

ラウンジの中心に据えられたのは、幅15mにも及ぶDJブース一体型のカウンター。「レトロフューチャーミュージック・バー」を謳うこの店のキーとなる音楽セレクト・ディスプレイはFPMの田中知之が手がけている。

〈傳〉長谷川在佑が手がけたバーフード。ジューシーなソーセージがごろんと挟まったホットドッグ600円。

またフード監修は、2019年度の「アジアベストレストラン50」にて日本最高の3位に輝いた外苑前〈傳〉のオーナーシェフ長谷川在佑によるもの。自身の店で提供するイノベーティブな日本料理とは正反対の、ホットドッグやポテトサラダ、プリンなどのクラシックな"バーフード"はぜひ味わってみたい。

渋谷最高峰の高さからの景色を、昔懐かしい音楽とともに。話題のクリエイターたちが作り出す空間が、東京随一のスカイビューをさらに盛り上げてくれるはずだ。

パラダイス ラウンジ

東京都渋谷区渋谷2-24-12 展望施設「SHIBUYA SKY」内46階 ※展望施設の入場チケットの購入が必要。TEL 03 6805 1199。9時〜23時(22時30分LO)。

ライトの照明〈タリアセン〉オマージュ第3弾は妹島和世、永山祐子、鈴木啓太が参加!

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November 12, 2019 | Design, Architecture | casabrutus.com

フランク・ロイド・ライトがデザインした照明〈タリアセン〉。この名作照明をさまざまな建築家、デザイナー、アーティストがさまざまにリデザインする企画が2017年から毎年行われいているが、その第3弾が発表された。今回は妹島和世、永山祐子、鈴木啓太の3名が参加している。

妹島和世デザインの《透明な明かり》。昼間はアクリルが周囲の光をやわらかく反射し、空間に溶け込む。価格未定。日本女子大学図書館にて。

フランク・ロイド・ライト生誕150周年を記念してスタートしたYAMAGIWAの〈タリアセン2〉特別限定モデルシリーズ。これまで伊東豊雄、皆川明、坂茂、名和晃平、グルーヴィジョンズ、橋本夕紀夫というクリエイターたちによって、さまざまなオマージュを捧げられてきた「タリアセン」だが、その第3弾が発表された。

今回参加しているクリエイターは建築家の妹島和世、永山祐子、デザイナーの鈴木啓太の3名。

妹島は《透明な明かり》と題した照明を発表。透明なアクリルの球体を8つ縦に重ねたもので、F.L.ライトのステンドグラスやラグ等のモチーフにもなった「円形」と、⾃⾝の建築モチーフとしても使⽤する「球体」との親和性から導かれた照明だ。

透明なアクリル球を8つ重ねる。地面と接地部分にのみLEDモジュールを設置。

永山は《TALIESIN LIGHT》と題したデザインを発表。オリジナルの要素はそのままに木から金属へと素材を変えることで、現代の建築空間に似合う軽やかなデザインを実現。限りなく薄いスチール表⾯には周囲の風景が映り込み、空間に溶け込む。

永山祐子デザインの《TALIESIN LIGHT》。細いパイプと薄いスチールで構成。750,000円。女神の森 セントラルガーデンにて。

そして鈴木は《TALIESIN ELEMENTS》と題したデザイン。フランク・ロイド・ライトを象徴するエレメントである「正⽅形」を⽤いて〈タリアセン〉を再構築する試みだ。波佐⾒焼の窯元に協⼒を得て完成させたセラミックパネルを採⽤。深みのあるグリーンの釉薬は⾃然と調和するライト建築からインスピレーションを得ている。

鈴木啓太デザインの《TALIESIN ELEMENTS》。900,000円

11月21日〜24日、青山の〈yamagiwa tokyo〉にてこの3モデルが発表される。

『YAMAGIWA PRESENTS HOMMAGE TO FRANK LLOYD WRIGHT』

〈yamagiwa tokyo〉 東京都港区南青山2-27-25 ヒューリック南青山ビル9階 TEL 03 6741 5800。11月21日〜24日。11時〜18時。

パリ|ポンピ鑑賞時にはハイメ・アジョンのカフェへ!

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November 13, 2019 | Design, Food | window on the world

ポンピドゥーセンター内のカフェテリアが、スペインを代表するデザイナー、ハイメ・アジョンによりリニューアル!

色とりどりのガラスパネルで様々な幾何学的な形状の小空間を作成。

〈カフェ・ル・ソントラル〉には、「鑑賞に疲れたら、空想夢想してリラックスしてほしい」とのハイメの思いから生まれた、独創的な形の「ムカデテーブル」や椅子が。ボードに描かれたイラストもすべてハイメの手描きによるもので、カフェ自体がユニークな芸術作品に。

ユーモア溢れるイラストで、気軽に芸術を楽しみつつコーヒーブレイク。

〈Café Le Central〉

Centre Pompidou,Forum, Mezzanine, Place Georges Pompidou 75004 Paris 火曜休。

クリスマスに部屋を飾るもの10。

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November 13, 2019 | Design, Art, Culture | casabrutus.com

サンタクロースが本当はいないとわかったあとでも、毎年、近づいてくるたびにワクワクするのがクリスマス。街のイルミネーションを見ているだけでも気分が上がるけれど、家のしつらえをクリスマス仕様にすることで、日々の生活がもっと楽しくなる。2019年のクリスマスを彩る、メリー・デザインな10アイテムをご紹介。

●〈アスティエ・ド・ヴィラット〉のオーナメント

左から、森の妖精3,700円、フクロウ8,700円、小屋9,500円、人魚4,200円。

〈アスティエ・ド・ヴィラット〉のデザイナー、イヴァン・ペリコリとブノワ・アスティエ・ド・ヴィラットが世界中からセレクトしてきたユニークなオーナメント。人魚のヒゲおじさんや森の妖精などのメルヘンもの、トランプや赤ラメスーツのショーマンといったカジノ風アイテム、ダース・ベイダーをはじめとしたスペースものなど、彼らの審美眼に適った様々なテイストのオーナメントが集合。王道クリスマスモチーフだけではないので、ツリーに飾ったあとでも、壁やドアノブなどにハンギング。通年のインテリア・ディスプレイとしても活躍してくれそう。

問い合わせ先/H.P.DECO 公式サイト

●アレキサンダー・ジラードのオーナメント

《ジラード オーナメント》。左から、ラビット、エンジェル、スター各1,800円。

キラキラと金色に輝くオーナメントは真鍮製。経年していくうちに色合いが濃くなり、独特の風合いが出てくるので、長年大切に使っていきたい。デザインしたのは、ミッドセンチュリー期のアメリカを代表するデザイナー、アレキサンダー・ジラード。彼が残した数100点のグラフィックから、ジラードの家族と〈ヴィトラ〉がモチーフを選んで製品化した。世界中を旅して民芸品やテキスタイルを収集し、デザインソースにしたことでも知られるが、星など単純なモチーフでも、彼にしか作れないフォルムが描き出され、一つだけでも存在感が際立つ。ただかわいいだけではないデザイン性の高さに注目したい。

問い合わせ先/ヴィトラ TEL 0120 924 725

●〈カンパニー〉による尾崎人形とマトショーリカ・オーナメント

佐賀県の郷土民芸品「尾崎人形」。左から、《スプルース 長太郎》、《松 長太郎》各6,000円。

ヘルシンキを拠点にいろいろな国の手仕事に着目。各国の伝統工芸と現代のデザインをミックスした作品を発表している、フィンランド人のヨハン・オリンと韓国人のアーム・ソンによるデザインユニット〈カンパニー〉が作り出したシリーズ。「尾崎人形」は佐賀県神埼町尾崎西分地区に伝わる、笛にもなる陶器のオブジェで、そこに昔からある長太郎をモチーフにツリーにも見える人形をデザイン。オーナメントにもなるマトリョーシカは〈イデー〉が別注をかけた限定アイテムになる。クリスマスシーズンが幸福感に包まれる、機知に富んだプロダクトだ。

問い合わせ先/イデーショップ自由が丘店 TEL 03 5701 7555

●アンディ・ウォーホルのプレートとキャンドル

〈ホリデーリース〉インテリアプレート15,000円。

20世紀を代表するポップアートの巨匠アンディ・ウォーホルによる作品『Untitled(Christmas Wreath)』(1955-1962年頃)をベースにした、クリスマスリースがプリントされたプレートとキャンドル。どちらもフランスのリモージュ焼による磁器製だ。キャンドルにはフレーバーとフレグランスの会社、ジボダン社によるスパイス プラムの香りが施されている。装飾用のプレートはリース代わりに壁やキャビネットの上にデコレーションを。クリスマス気分を盛り上げること必至な華やかさ抜群のアイテムだ。

問い合わせ先/MoMA デザインストア オンラインストア 公式サイト

●〈アンリオ・カンペール〉のプレートとオーナメント

〈ノエル〉プレート28cm 13,402円。

ルイ14世の時代に王立の工場制手工業として設立した陶器メーカー〈アンリオ・カンペール〉。現在も操業をしている、もっとも古いフランス企業の一つであり、フランス西北端に位置するフィニステール県の中心都市カンペールのシンボル的存在でもある。その特徴はアンリオタッチと呼ばれる手描きの絵付け。代々受け継がれてきたカンペール焼伝統のタッチで、海と緑に囲まれた豊かな自然や日常の風景を写し出している。クリスマスのシリーズも素朴な伝統絵柄が軸になり、温かな優しい気持ちを誘い出してくれる。

問い合わせ先/アンリオ・カンペール/デコラーレ TEL 096 355 8152

●〈ファブラグース〉のノルディック ツリー DIYキット

《ノルディック ツリー キット》M各4,800円、 L各6,500円。2サイズ6色展開。

デンマークのイラストレーターで紙のアーティストでもある「テレサジェシング」によってデザインされた、紙で作るツリーのキット。木製の台やビーズなどがセットになっていて、ツリーの葉っぱを台紙から外し、付属の設計図にそって組み立てていくだけ。カッターやハサミを使わずこれ一つで完成するため、子どもにも安心だ。クリスマスを迎える準備はそれだけでも楽しいが、自分の手でツリーを作る時間はかけがえのない喜びになる。スタンドのほかにモビールもあり、ギフトにも最適。

問い合わせ先/KOTTE & Co. TEL 03 6427 6120

●〈セラミカ・アルティスティッチナ〉のキャンドルホルダー もみの木

キャンドルホルダー 〈モミの木〉 左から、《ヤポニア》15cm 5,100円、《ドヌーブ》20cm 7,000円、《アスター》17.5cm 6,000円、《ヤポニア》20cm 6,300円、《トゥホラ》15cm 5,700円、《トゥホラ》20cm 6,900円。

ぽってりとした乳白色の生地が温かみを醸し出す、ポーランドのボレスワビェツ陶器。多くのメーカーの中でも〈セラミカ・アルティスティッチナ〉はその代表格。ピーコックアイをモチーフにしたドヌーブなどの伝統柄に加え、このメーカーならではの個性的な絵柄も揃う。すべてハンドメイドによるもので、絵付けも一つ一つ職人の手作業で行われている。クリスマスにオススメなのが、もみの木の形のキャンドルホルダー。ところどころ穴があいていて、炎のゆらめきを感じることができる。家中の部屋に一つずつ揃えたくなる。

問い合わせ先/大和 公式サイト

●〈キャサリンコレクション〉のジュエルグリーンツリー

《ジュエルグリーンツリーオブジェ》110,000円。

ラインストーンがふんだんにあしらわれたゴージャスなツリー。高さ65cmで、これがあるだけでおとぎ話の世界に入り込んだような、ロマンチックなクリスマスを過ごすことができそう。作ったのは1991年にアメリカのオハイオ州に誕生した、デコレーション会社から始まった〈キャサリンコレクション〉。ハンドメイドによるオリジナリティのあるオブジェや一風変わったキャラクターが人気を呼び、世界中にコレクターがいる。同じクリスマスシリーズでトナカイやサンタクロース、ソリなども揃う。

問い合わせ先/ハルモニア 公式サイト

●〈ウェッジウッド〉のホリデイ アドベントカレンダー

《ホリデイ アドベントカレンダー》65,000円。

クリスマスを迎えるまで1日1個ずつ。ジョージアンスタイルの邸宅を模したボックスに24個の引き出しがついていて、それぞれにミニチュアサイズのオーナメントが収まっているアドベントカレンダー。クリスマスの日まで小さなプレゼントが毎日贈られ、気分を盛り上げてくれる。オーナメントはすべてポーセリン製。少しずつ揃っていく様子もかわいらしく、ツリーに結んだり、部屋にディスプレイしてクリスマス本番を迎えたい。

問い合わせ先/ウェッジウッド 公式サイト

●ビヨン・ヴィンブラッドのキャンドルホルダーとオーナメント

左から、キャンドルホルダー《ガブリエル》3,500円、ダブルキャンドルホルダー《ルチア》6,500円、オーナメント《クリスマス エンジェル》3,000円、キャンドルホルダー《聖母マリアとイエス》4,500円。

デンマークのアーティスト、ビヨン・ヴィンブラッドによる、キリスト降誕の物語に登場する人物をモチーフにした作品からインスピレーションを受けたクリスマスアイテム。キリスト誕生をマリアに予言した大天使ガブリエルや、キリストを抱く聖母マリア、キリスト殉教者の聖ルチアなどが揃う。光沢のある白磁にゴールドで絵柄が描かれたキャンドルホルダーとオーナメントは、聖なる夜にふさわしい上品なつくり。クリスマスディナーのテーブルオブジェとしても活用したい。

問い合わせ先/イルムスオンライン TEL 06 4796 6560

ジャスパー・モリソンが手がけた携帯電話〈プンクト〉、その使用感をレポート!

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November 13, 2019 | Design | casabrutus.com

スマートフォンが当たり前になった現在だからこそ、あえて新しい携帯電話のあり方を提案する〈プンクト〉の《MP 02》。ジャスパー・モリソンがデザインしたこのモデルは、毎日の生活を見つめ直すきっかけになりそうな、本質的な魅力を備えている。

「スーパーノーマル」をキーワードに幅広い製品を手がけるジャスパー・モリソンらしい、必要な要素を的確にレイアウトした《MP 02》のデザイン。

日進月歩で果てしなく機能を拡張していくスマートフォンを、現在は多くの人々が当然のように手にしている。しかし過剰なほどの情報やコミュニケーションに、ストレスを感じることが増えたのも確か。スイスのブランド〈Punkt.〉(プンクト)から発売された《MP 02》は、そんなスマートフォンの対極に位置づけられそうなシンプルな携帯電話だ。主な機能は通話とSMSで、カメラもないしインターネットも見られない。しかし、これは決して懐古主義的な製品ではない。

実際に《MP 02》を手にすると、この携帯電話がユーザーの視点を大切にしてデザインされているのがわかる。誰が持っても手のひらにしっくりと収まるサイズとフォルムは、昨今のスマートフォンにはなかった感覚だ。すべてのボタンが押しやすい位置に並び、軽い割にいかにも丈夫そうで、何となく安心感を覚える。この印象に比べると、スマートフォンにはブラックボックスのような得体の知れなさがあることに気づかされる。デザインを手がけたのは、イタリアの有力家具ブランドから無印良品まで、日常生活に溶け込むデザインを数多く手がけてきたジャスパー・モリソンである。

《MP 02》の重さは100gで、最新のスマートフォンの約半分程度。裏面の立体的なフォルムのため、テーブルなどに置いた状態でも手にしやすい。

ハードのデザインだけでなく、ソフトのデザインも《MP 02》はよくできている。ディスプレイの表示はモノクロで、アイコンを使わず文字のみをレイアウトしているのでスマートな雰囲気。またサウンドはノルウェーのサウンド・アーティスト、チェーティル・ロスト・ニルセンによるもので、鳥の声や自然の音を思わせる、心を和ませるものが揃っている。

スマートフォンと比べられるほどの便利さは、この携帯電話にはないだろう。スマートフォンひとつあれば、あらゆることができるという身軽さは確かに大きな魅力だ。しかしスマートフォンがどんなに進化しても、ムービーは大きい画面で観たいし、仕事やインターネットならPCのほうが快適だ。そんなふうに満足度の高さでひとつずつものを選ぶなら、電話として音質のクオリティーが高く、軽くて持ちやすい《MP 02》は最良の機種に違いない。

時計、アラーム、電卓、カレンダーなど基本的な機能をそなえ、表示は日本語を含む主要言語に対応している。

もちろん、普段はスマートフォンをメインに使い、一時的なデジタルデトックスのために《MP 02》を持つという選択肢もある。平日はスマートフォンが手放せなくても、家族と過ごす週末や、アウトドアに出かける休暇は、シンプルな携帯電話を手元に置くような使い方。《MP 02》はテザリング機能があるので、必要な時だけタブレットを取り出してネットにつながることもできる。

進んだテクノロジーが日常生活にしばしば弊害をもたらすのは、専門家が指摘するまでもなく、誰もが実感しているはずだ。そんな状態から距離を置いて、自分に合ったライフスタイルを見つけることの価値は、日々高まっている。《MP 02》は、人とテクノロジーのほどよい関係をつくる可能性を秘めたプロダクトだ。

〈プンクト〉《MP 02》

44,800円(税込)。問い合わせ:プンクト TEL 050 1749 6677。

ジョナサン・アンダーソンによる〈CASA LOEWE Tokyo〉が誕生!

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November 13, 2019 | Fashion, Design, Architecture | casabrutus.com

〈ロエベ〉のグローバル旗艦店〈CASA LOEWE Tokyo〉が、銀座並木通りに誕生。クリエイティブ・ディレクターのジョナサン・アンダーソンによる店舗デザインに注目です!

〈CASA LOEWE Tokyo〉(カサ ロエベ 東京)店舗外観。

〈ロエベ〉におけるファッションのプレゼンテーションは2016年秋冬より、想像上の家=CASAからインスピレーションを受けている。その家の住人はどんな好みを持ち、シーズンごとにどう興味を変化させているのか? そのようなコレクションのスタート地点としての“家”を、世界各地で体現する旗艦店、それが〈CASA LOEWE〉だ。

〈CASA LOEWE〉は、マドリード、ロンドン、マイアミなど、世界各地の拠点としての役割を担っており、全ての店舗デザインは、クリエイティブ・ディレクターのジョナサン・アンダーソンによるものだ。ジョナサン独自の“建築的パレット”に従いデザインされる内装。また店内に展示される、卓越したアート、クラフト、デザインを蒐集する「ロエベ コレクション」から選び抜かれたマスターピース。そして、クラフトマンシップの活きる〈ロエベ〉のクリエイションの数々。〈CASA LOEWE〉は、ショップであることを超えた、建築、家具、ファッション、アート、あらゆる角度からブランド独自の価値を呈示する、インスタレーションなのだ。

店内1F。コンクリートは、〈ロエベ〉の“建築的パレット”の定番要素である。

〈CASA LOEWE Tokyo〉では、マドリードやロンドンと同様、コンクリートを豊かに用いるとともに、階段の手すりや2Fの天井、棚などの各所に、日本の天然木材を使用。また、テキスタイルアーティストのジョン・アレンによるデザインの天然ウールラグが、空間に彩りを加えている。

ジョージ・ナカシマのチェア《コノイド・クッション》、ジム・パトリッジのベンチ、アクセル・ヴェルヴォールトのコーヒーテーブル《フローティング・ストーン》といったモダニズムの家具も各フロアに配されている。

木材が曲線を描く階段の手すり。壁の作品は、ジョン・ワードによる『A Stoneware Disk Pot』。
2F。

オープン時には、スペインのアーティスト、グロリア・ガルシアロルカによるインスタレーション作品、また“テキスタイル彫刻家” シモーヌ・フェルパンや陶芸家の桑田卓郎らの作品などを、店内を歩きながら“発見”していけるような形で展示する。

限定アイテムや、世界先行発売となるバッグもラインナップ。〈ロエベ〉のクリエイティブの粋を味わえる空間を、ぜひ体感してほしい。

世界に先がけて発売される《ポスタル バッグ 東京》290,000円。

〈CASA LOEWE Tokyo〉

東京都中央区銀座7-5-4。11時〜20時。不定休。11月16日オープン。

『スター・ウォーズ』デザインの〈シャーク〉ハンディクリーナー!

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November 14, 2019 | Design | casabrutus.com

〈シャーク〉は、映画『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』に登場する、《カイロ・レン》《C-3PO》《BB-8》デザインの特別仕様モデルを発売する。

《Shark EVOPOWER Star Wars Limited Edition》12月中旬発売、日本限定・数量限定、市場想定価格約21,000円。

『スター・ウォーズ』シリーズの大ファンである〈シャーク〉のエンジニアとデザイナー達が凝りに凝った、こだわりのデザイン。ベースとなるハンディクリーナー《EVOPOWER》のデザインは、元々、劇中の「ライトセーバー」からインスピレーションを得ているというから、このコラボ企画は他とは一線を画す完成度に仕上がっている。

《C-3PO Limited Edition》。
《BB-8 Limited Edition》には「汚し」が入っているのがポイント。

デザインは《カイロ・レン》《C-3PO》《BB-8》の三種類。青く光る電源ボタンは各キャラクターのデザインにカスタマイズ済み。隙間用ノズル、マルチノズル、布団用ノズル、充電ドック(Wバッテリー用)、Wバッテリーもフル装備。約620gという軽さから、ライトセイバーを振るように掃除がはかどるかも? 12月3日より公式オンラインストアにて先行予約開始。12月中旬に発売予定、数量限定なのでお見逃しなく!

『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』12月20日(金)全国ロードショー。配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン(C)2019 ILM and Lucasfilm Ltd. All Rights Reserved.

奇跡の建築〈ヒルサイドテラス〉の50年を振り返ります!

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November 14, 2019 | Architecture, Design | casabrutus.com

建築家、槇文彦が地域の人々と作り上げてきた東京・代官山の〈ヒルサイドテラス〉。今年はその第1期計画が完成してからちょうど50年になります。今も古びることのない魅力の秘密と歴史を振り返る展覧会が始まりました。

〈ヒルサイドテラス〉A・B・C棟をのぞむ(1973 年)。広い道(皮)に建物(あんこ)が直接くっついている、と槇は表現する。これだけ広い道路に接して、低層の建物が建てられている事例は少ない。

代官山の〈ヒルサイドテラス〉内「ヒルサイドフォーラム」、「エキジビションルーム」で開かれている『HILLSIDE TERRACE 1969-2019 —アーバンヴィレッジ代官山のすべて—』は〈ヒルサイドテラス〉とその土地の所有者である朝倉家の150年にわたる歩みを振り返るもの。〈ヒルサイドテラス〉の第1期計画が完成してから50年、隣接する〈旧朝倉家住宅〉の建設から100年という節目の年を記念したものだ。

〈ヒルサイドテラス〉A棟(1973年頃)。左側に見える粟津潔デザインの木のようなサインのほかは、目立つ看板などは出さないようにしていた。 photo_Kaneaki Monma

〈ヒルサイドテラス〉は代官山の駅を歩いてしばらくすると見えてくる白い建物。たっぷりとした緑を背景にギャラリーやカフェ、ショップが現れる。50年前、1969年に第1期計画が完成してから第6期まで20年以上の年月をかけ、ゆっくりと成長してきた。設計は槇文彦。近代建築の保存に取り組む国際組織「DOCOMOMO」にも認定されている、代官山の街並みを形成してきたと言ってもいい存在だ。

『HILLSIDE TERRACE 1969-2019 —アーバンヴィレッジ代官山のすべて—』展より。代官山をいくつかのエリアに分け、そのエリアごとに象徴的な時代をピックアップして組み合わせた、歴史のコラージュのようなジオラマ。 photo_Shin-ichi Yokoyama

この敷地を所有する朝倉家は明治初めから精米業を営んできた家だ。戦後は不動産業を主な事業とし、1960年代には朝倉誠一郎とその息子である徳道、健吾が中心となって運営していた。一方、槇は戦後アメリカに留学、ハーバード大学などで教鞭を執った後、帰国して1965年に槇総合計画事務所を開設していた。彼らは1967年、徳道、健吾と槇が慶應義塾大学の同窓生だったことが縁で出会う。当時、朝倉家では旧山手通り沿いの土地にアパートを建てるため、設計をしてくれる建築家を探していた。

〈ヒルサイドテラス〉C棟。〈ヒルサイドテラス〉各棟には現在〈ミナ ペルホネン代官山〉、〈レストラン・パッション〉、〈クリスマスカンパニー〉などのショップやレストランが入居している。

1969年、第1期計画で建てられたのはA棟・B棟。その後1973年に第2期(C棟)、77年に第3期(D・E棟)……、と〈ヒルサイドテラス〉は少しずつ成長していく。1992年に第6期計画であるF・G・H棟が完成、1998年にはヒルサイドウエストが完成した。およそ30年かけて今の街並みを作ってきたことになる。

この街並みの形成には規制がプラスに働いた面もある。第1期計画の敷地は第一種住居専用地域かつ第一種高度地区であり、住居以外の建物は建てられず、高さは10メートル以下、というきまりがあった。そこで“一団地計画”として申請し、ショップやレストランをつけることが可能になったのだ。

第6期計画の敷地は10メートルの高さ制限はなかったが、道路に近いほうはあえて10メートルに抑え、他の棟と高さを揃えた。道路から奥まった部分は高くなっているが、道を歩いている人にはほとんど見えない。低層でのびやかな街はこうして生まれた。

〈ヒルサイドテラス〉F・G棟の道路に面したところは、向かいのA〜D棟に合わせて高さを10メートルに抑え、その後ろをやや高くした。

小さいけれど空間構成は複雑だ。半地下になったフロアを含め、各階はスキップフロアになっており、微妙な高さの差が生まれる。ここでは視線の抜けを重視した。通路や大きなウィンドウを通じて、後ろに広がる緑が見える。ヒルサイドプラザの背後には〈旧朝倉家住宅〉が残された。1919年、大正時代に建てられた近代和風建築だ。現在は重要文化財に指定され、一般に公開されている。周囲には庭が広がり、〈ヒルサイドテラス〉からの美しい借景となっている。その静けさは、賑やかな通りとは対照的だ。

〈旧朝倉家住宅〉。戦後、相続税支払いのため売却され、後に国が売却を決定したが、反対運動により、2004年に国指定の重要文化財となって残された。貴重な和風建築として〈ヒルサイドテラス〉を見守っている。 撮影:新津保建秀

〈ヒルサイドテラス〉では路地のような空間が各建物を結び、旧山手通りから内部の広場、各店舗や住戸へと回遊できる。
「〈ヒルサイドテラス〉のようなモダニズム建築では、こういった回遊性が特徴の一つです。ここに来られた際は外観だけでなく、内外の重層的な空間を体験してほしい」と槇総合計画事務所副所長の福永知義は言う。

『HILLSIDE TERRACE 1969-2019 —アーバンヴィレッジ代官山のすべて—』展に出品されている〈ヒルサイドテラス〉模型。隅入りの様子がわかる。 photo_Shin-ichi Yokoyama

もうひとつ、「隅入り」となっているのもここの特徴だ。「隅入り」とは建物の角から入る形式のこと。西洋の建築では左右対称とし、その中央から入っていくものが多い。日本の伝統的な建て方である隅入りとすることで、威圧感をさらに減らし、親しみやすい空間になる。

F棟の〈ヒルサイドカフェ〉。〈ヒルサイドフォーラム〉に隣接していて、そこでの展示も見える。

現在、〈ヒルサイドテラス〉には住居、ショップ、レストランのほか、ギャラリーやホールなど、文化活動に使えるスペースを備えている。F棟の〈ヒルサイドフォーラム〉で毎年行われている、若手建築家の優れたアイデアを表彰する『SDレビュー』は槇の発案で始まった。〈ヒルサイドフォーラム〉ではこのほかにガウディや〈ヒルサイドテラス〉のサイン計画を担当したグラフィックデザイナー、粟津潔など多くの展覧会が行われている。

F棟。並び立つ円柱に寄り添うように、藤江和子がデザインした家具が置かれている。藤江はヒルサイドテラスに事務所を構えていた。

A棟には『大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ』などのディレクターを務める北川フラム主宰の「アートフロントギャラリー」が入居し、国内外のアーティストの作品を紹介している。建物を廃材で覆う川俣正のインスタレーション『工事中』や街中にアートを展示する『代官山インスタレーション』など、ギャラリーの外でアートが展示されたこともあった。1987年には「コンサートが開けるようなホールが欲しい」という朝倉家の要望で〈ヒルサイドプラザ〉が完成する。家で音楽を聴くような気持ちで楽しめるこのホールには、高橋悠治ら世界的な音楽家たちも出演してきた。

川俣正「工事中」(1984年)。建物の外側に廃材を使ったインスタレーションを制作。が、店舗から閉店だと思われる、とクレームがつき、会期を短縮。川俣は、2017年に「工事中『再開』」としてA棟の屋上を中心に廃材を用いてインスタレーションを展示した。 撮影:宮本隆司
《代官山リビング》セカンドリビング研究会(2005年)。1999年から全8回行われた屋外でのアート展示『代官山インスタレーション』での出品作。通常は入れない中央分離帯に長いリビングテーブルを設置した。 撮影:野口浩史

人々が住まい、働き、カフェやショップで楽しみながら文化を享受する。そんな状況を槇は、「50年前には予想していなかった」という。

「当初はそういったことは考えていませんでした。第3期(D・E棟、1977年完成)のときに住居とレストラン、ショップだけじゃなくて小さくても文化活動の拠点になるようなものにしたいね、と朝倉健吾さんと話したんです。その後、1987年に第5期の『ヒルサイドプラザ』を、第6期に『ヒルサイドフォーラム』をつくりました。住居と店舗に加えて文化の拠点があれば、人の交流がもっと厚くなるのでは、と考えたんです」(槇)

1976年から1982年まで開かれた「代官山交歓バザール」。テナント同士の交流を深め、当時はまだ人通りが少なかった代官山に人を呼び込もうという目的で始まった。現在は「猿楽祭 代官山フェスティバル」となって続けられ、コミュニティの形成に一役かっている。

長い時間をかけて作られたため、内部の空間構成は時代ごとに異なっている。

「第1期計画を始めた1968年から92年に第6期計画が完成するまで、東京の街もライフスタイルも大きく変わってきました。〈ヒルサイドテラス〉の住居もその時代ごとの新しいニーズを反映しています。第1期では当時はまだ珍しかったメゾネットタイプでしたが、第3期にはワンルームを、第6期には住まいとワークスペースが共存する、SOHOのようなものを作りました。小さな開発計画ですが、さまざまなスタイルの住居が入っています」(槇)

『HILLSIDE TERRACE 1969-2019 —アーバンヴィレッジ代官山のすべて—』展、会場風景。歴代の“住人”(入居していたショップやレストラン)を紹介している。 photo_Shin-ichi Yokoyama

槇は常に広場などのパブリックスペースのあり方を慎重に検討している。〈ヒルサイドテラス〉でも種々の広場が住む人、訪れる人を出迎える。

「第1期ではコーナーにサンクンガーデンを、第2期では中庭、第3期は猿楽神社の古墳のような丘を、第6期は少し奥まったところに南向きの広場というように、こちらもそれぞれ違うタイプのものをつくることができました。外国と違って日本では地形にアップダウンなどの変化があるので、それに対応して作ることが重要になります」(槇)

『HILLSIDE TERRACE 1969-2019 —アーバンヴィレッジ代官山のすべて—』展、1984年に開催された川俣正《工事中》の写真や模型を展示。 photo_Shin-ichi Yokoyama

ここでもまた、高さ制限があったこと、ぎっしりとは建てられない規制があったことが幸いした。

「住む人も働く人も訪れる人もすぐに1階に出られるから、出会いやコミュニティ意識が生まれやすい。そこから、周辺の地域もよくしていこうという試みも出てきます。〈ヒルサイドテラス〉に隣接して〈代官山 T-SITE〉ができたとき、できれば大きな木は残してほしい、と要望したらその通りにしてくれました。建物は〈ヒルサイドテラス〉と同じく道路からセットバックしていて、天気がよければそこで食事をしたり、自転車を置いたりと新しい緩衝地帯になっています。〈ヒルサイドテラス〉が静なら〈代官山 T-SITE〉は動のイメージがありますが、〈ヒルサイドテラス〉のいいところを受け継いでくれている。〈ヒルサイドテラス〉がまわりの環境をよくしていく、新しいアーバニズムの例になったと思います」(槇)

『HILLSIDE TERRACE 1969-2019 —アーバンヴィレッジ代官山のすべて—』展に展示されている槇文彦のノートブック。 photo_Shin-ichi Yokoyama

ゆとりをもって建てられ、50年かけて人と地域を育ててきた〈ヒルサイドテラス〉は、今の日本にあっては奇跡のような建物だ。その次の50年に向けて何が始まるのか、この展覧会で見届けたい。

『HILLSIDE TERRACE 1969-2019 —アーバンヴィレッジ代官山のすべて—』展、ヒルサイドフォーラムで過去2回、展示を行ったクリスト&ジャンヌ=クロードの作品と記録写真。 photo_Shin-ichi Yokoyama

『HILLSIDE TERRACE 1969-2019 —アーバンヴィレッジ代官山のすべて—』

〈ヒルサイドテラス〉「ヒルサイドフォーラム」「エキシビションルーム」 東京都渋谷区猿楽町18-8。11月9日〜12月8日。11〜19時(金曜は20時まで)。入場無料。展覧会に合わせて〈ヒルサイドテラス〉の50年をまとめた書籍『Hillside Terrace 1969-2019』(現代企画室/3,500円)も出版。

【11月16・17日】今週末必見の“アート&デザイン”まとめ!

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November 15, 2019 | Art, Design | casabrutus.com

カーサが注目する、週末の注目イベントをまとめてご紹介。会期終了間近の展示多数、駆け込みでチェック!

・『バスキア展 メイド・イン・ジャパン』(9月21日〜11月17日)

photo_Takuya Neda/Artwork © Estate of Jean-Michel Basquiat. Licensed by Artestar, New York

27歳で悲劇的な死を遂げたジャン=ミシェル・バスキアの日本では初めての本格的な展覧会が開催中。123億円という驚きの価格で落札されたあの絵も並んでいます!

・『夢のかたち Hermès Bespoke Objects』(11月1日〜11月17日)

photo_Akihide Mishima

六本木で始まった『夢のかたち Hermès Besopke Objects』は、〈エルメス〉がビスポークで製作したユニークな特注品を展示する催し。会場構成を担当したガムフラテーシのふたりに、今回の空間のデザインや〈エルメス〉への思いを尋ねた。

・『想起の力で未来を:メタル・サイレンス2019』(10月18日〜11月17日)

2018年にアート・イベントが公開されて話題になった〈旧博物館動物園駅〉。今は使われていない「幻の駅」に、期間限定でアートが帰ってきました。積み重なった歴史を感じさせるインスタレーションです。

・『須田二郎「木の器」展@OUTBOUND』(11月13日~22日)

photo_Keisuke Fukamizu

器は料理を盛ってこそ!ということで、人気作家の最新作を発表する個展に合わせて、作家本人にも料理を作ってもらっちゃおう…という無茶ぶり企画5回目。ダイナミックで使いやすいウッドボウルで大人気の木工家、須田二郎の工房を訪ねました。普段の料理が映えるボウルから木のカトラリーや調理ツールまで、350点の作品が並ぶ個展は、東京・吉祥寺の〈OUTBOUND〉で11月13日から開催!

・『HILLSIDE TERRACE 1969-2019 —アーバンヴィレッジ代官山のすべて—』(11月9日〜12月8日)

建築家、槇文彦が地域の人々と作り上げてきた東京・代官山の〈ヒルサイドテラス〉。今年はその第1期計画が完成してからちょうど50年になります。今も古びることのない魅力の秘密と歴史を振り返る展覧会が始まりました。

・『目 非常にはっきりとわからない』(11月2日〜12月28日)

photo_Shin-ichi Yokoyama

思いもよらない仕掛けで鑑賞者に楽しい驚きを体験させてくれる現代アートチーム「目」。千葉市美術館で開かれている個展『非常にはっきりとわからない』でも意外な体験が待っています!

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